「御所」という名前の起源には２つの説があります。修験者が周辺の５つの峰々を巡ったことから「五所山」というもの。もうひとつは「順徳上皇伝説」にもとづくものです。上皇伝説には周囲に多くののロマンがあります。

堂々とした御所山の姿を背にして姥地蔵は座っています。尾花沢市と東根市の境、南御所山縦走路上の層雲峡大沢小屋へ下る道の分岐点です。石に彫られた文字に、うっすらと文久元年とあります。実に１４０年以上もこの場所におられるのです。山岳信仰盛んな往時を偲ばせる姥様です。

承久の乱に敗れ佐渡に配流となった順徳天皇が、島を逃れ尾花沢に潜幸し、市内でその生涯を終えたとされる”順徳上皇伝説”は市民に広く知られています。そのストーリーは次のようなものです。「佐渡に流された上皇は２０年後の1242年に漁船に乗り、ひそかに越後に上陸する。その後、最上川を遡り大石田に着く。そこから丹生川沿いを進み、御所山に入った。やがて山を下り、市内正厳（しょうごん）を宮居としたが、1246年病に伏しこの地で亡くなられた。」現在も丹生川沿いには御所神社が数社鎮座し、宮居にはりっぱなお社が建ち、近くには上皇の陵とされる天子塚があります。それ以降、山は御所山と呼ばれるようになったというものです。＜写真は天子塚＞

天子塚の南方１キロのとこに鎮座する御所神社。御祭神は順徳天皇。この地は、山を下った上皇が住まいをされた場所とされ、上皇に同行した、阿部常次郎頼時の子孫が代々このお社の宮司である。

尾花沢からの登山は約４キロの林道歩きからはじまる。丹生川渓谷沿いのこの道は終戦前後に造られた森林鉄道として開発されたものである。昭和３０年代、鉄道廃止後も林道として利用され、戦後の国土復興に大きな役割を果たした木材が搬出された。現在は車両乗入れ禁止だが、往時をしのぶ隧道が２つ残った。さびた軌道などを見つけるともある。幸いにも地形が険しく、平坦地が少ないため伐採は山頂部へ進まなかったのかもしれない。