初夏の夜、ホタルの光は自然の不思議をあらためて感じます。尾花沢市街から北に約６キロ、両側に山が迫る静かな集落、牛房野地区。この地区では１０年ほど前から増えてきたホタルを大切にしようと活動を続けています。その頃、なぜホタルが増えてきたのでしょうか。農薬の空中散布を止めたこと、地区の人が農薬や毒性の強い物の流出防止に努めていることなどの環境整備が総合的に作用し、動植物の連鎖がバランスよく保たれているのではないでしょうか。そんな牛房野地区に守る会の星川さんから今年のホタルについて聞きました。

牛房野は尾花沢市街地から車で１５分ほど。集落の入口が近づくと看板が見えてきます。道は看板から左に進むのですが、右にも細い道が見えます。ここは旧道で、右手に道にかぶさるように山が迫っています。「さっかかり岩」と呼ばれる牛房野のシンボルのようなもので、豪雪地帯のこの地で、真下を通る地区民にとって怖い存在でもあったはずです。歴史の古い同地区を見つめてきた岩、そこに暮らす人に思いを馳せながら鑑賞に出かけてください。

集落の入口に架かる橋の上下流がホタル鑑賞地になります。ピークが近づくと、鑑賞者が増えるため地区の方が交通整理をします。最盛期は手前で車を降りて、歩くことになります。６月になればホタルはすでに川をあがり近くの土の中で成虫になる準備を整えます。

田んぼの蛙、くわを持った農家のひと。ホタル以上にゴボウノの名前が知られているのは「牛房野カブ」と呼ばれる赤カブの存在。やせた土地に焼畑を作り植えたこの作物に、土地の人の知恵と歴史を感じます。

集落を流れる川をのぞくと、地区民の努力でゴミなどは勿論ありませんが、渓谷の清流といった感じでもありません。ホタルは川の流れが人間の暮らしと出会ったところを好むようです。市内のホタルが見られる他の場所も同じような環境です。カワニナの生息、川から這い上がれる護岸、その周辺の草地とやわらかい土など生息地としての条件を牛房野川は満たしています。卵から成虫まで、１年の営みのクライマックスとして光を放つのは１〜２週間と言われています。写真＝牛房野川の流れ2004.6.6撮影。

ホタルが最も盛んに活動するのは午後８時半頃です。風が無くて蒸し暑い夜に特に多いようです。今年は２０日から一週間ほどが良かったようです。成虫は交尾を終え産卵、幼虫の誕生と新しい命の営みが始まっています。来年もまた会えることでしょう。写真は2004.6.30撮影。